M&Aで会社を売却する期間は、仲介会社への正式依頼からクロージングまでで6ヶ月〜1年が標準、平均は約9ヶ月というのが複数の公式情報・業界各社の支援実績から見た現行の相場です。 ただし、準備状況・案件規模・買い手との相性によっては最短3ヶ月で完結するケースもあれば、2年以上かかる大型・複雑案件もあります。
この記事でわかること
- M&A売却にかかる期間の全体像(平均・最短・最長)と、公式ソース別の目安
- 検討開始からクロージングまでの12ヶ月モデル・タイムライン表
- フェーズ別(準備/マッチング/DD/最終契約/クロージング)の所要期間
- 期間が短くなるケース・長くなるケースの具体的な条件
- 売り手側で売却期間を短縮する7つの準備ポイント
- 決算期・相続・個人保証解除など、期間と絡む重要論点
- 「今動けば何月に譲渡できるか」を逆算する考え方
こんな方に向いています
- 会社売却を検討し始めたばかりで「どれくらい時間がかかるのか」が気になるオーナー経営者
- 引退時期・相続対応・後継者問題から、売却時期を逆算したい中小企業の社長
- 仲介会社との契約前に、現実的なスケジュール感を把握しておきたい方
- 「早期売却」をうたう広告や業者の提案が、現実的なのか判断したい方
M&A売却にかかる期間は平均9ヶ月〜1年が現実的
結論として、中小企業のM&A売却にかかる期間は「6ヶ月〜1年」が最も一般的な目安です。業界各社の公式情報・支援実績ベースで整理すると、次のような幅があります。
主要仲介会社・公的機関が示す期間の目安
ソース | 全体期間の目安 | 備考 |
|---|---|---|
日本M&Aセンター | 最低6ヶ月〜(上限明記なし) | 「縁のもので一概に言えない」との公式見解 |
ストライク | 標準で6ヶ月〜1年 | 11ステップの売却プロセスを公開 |
クレジオ・パートナーズ | 平均約9ヶ月(自社支援実績) | 最短3ヶ月/最長6年以上の事例あり |
M&Aロイヤルアドバイザリー | 6ヶ月〜1年(早期1ヶ月/複雑案件2〜3年) | フェーズ別の内訳を公開 |
みつきコンサルティング | 一般6ヶ月〜1年6ヶ月/平均1年前後 | 急ぎ3ヶ月、長期2年以上 |
マネーフォワード クラウド | 半年〜1年半/平均約1年 | 売り手視点のフロー解説 |
CINC Capital | 平均6ヶ月〜1年 | 業績・市場環境・DDで変動 |
プルータス | 順調でも6〜8ヶ月 | 入札方式のスケジュールを明示 |
中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」 | マッチング段階だけで「数ヶ月〜1年程度」が多い | 2024年8月改訂 |
※各社公式サイト・中小企業庁公表資料に基づく(確認日: 2026-04-17)
期間のサマリー(現行相場)
- 最も多いレンジ: 6ヶ月〜1年
- 平均値(業界各社の支援実績): 約9ヶ月〜1年
- 最短: 3ヶ月程度(同業・既存取引先・好業績で条件整合時)
- 長期: 2年以上(規模大/分散株主/DDで簿外債務発見/相続発生/経済ショック等)
一般的には、「検討を始めてから実際に譲渡するまで」を含めると、さらに半年〜1年ほど上乗せして考えるのが現実的です。仲介会社選定や社内整理に時間がかかる会社が多いためです。
【12ヶ月モデル】M&A売却の全体タイムライン
中小企業のオーナーが仲介会社に正式依頼してから、株式・事業を譲渡実行するまでの標準的な12ヶ月モデルです。現時点で業界各社の公式情報を統合すると、次のフェーズ配分が最も標準的です。
M&A売却 全体タイムライン表(12ヶ月モデル)
# | フェーズ | 期間の目安 | 主な作業 |
|---|---|---|---|
1 | 事前検討・仲介会社選定 | 0〜数ヶ月(任意) | 売却目的の整理、譲れない条件の決定、複数社との面談 |
2 | アドバイザリー契約・企業概要書(IM)作成 | 1〜2ヶ月 | NDA、決算書3期分・定款・契約書・従業員名簿の整理、バリュエーション |
3 | 買い手候補打診(ロングリスト→ショートリスト) | 1〜3ヶ月 | 匿名打診(10〜30社)、NDA締結(5〜10社)、IM開示 |
4 | トップ面談・意向表明書(LOI)受領 | 2週間〜1ヶ月 | 1〜3社の候補から条件提示 |
5 | 基本合意書(MOU)締結 | 2週間〜1ヶ月 | 価格レンジ・独占交渉権などの合意 |
6 | デューデリジェンス(DD) | 1〜2ヶ月 | 財務DD・法務DD・事業DD |
7 | 最終条件交渉 | 2週間〜1ヶ月 | DD結果を踏まえた価格調整・表明保証・ロックアップ等 |
8 | 最終契約書(SPA)締結 | 数日〜2週間 | 株式譲渡契約の締結 |
9 | クロージング(決済・引渡し) | 契約締結日〜1ヶ月 | 前提条件充足確認、代金決済、株券・印鑑引渡し |
10 | 引継ぎ期間(売手経営者によるPMI協力) | 6ヶ月〜2年 | 顧客・取引先・従業員への引継ぎ |
#1〜#9の合計: 6ヶ月〜1年が標準(早い場合3ヶ月、遅い場合2年以上)。
#10の引継ぎ期間は、クロージング後に売り手経営者が買い手に協力して業務・人脈を渡すフェーズで、クレジオ・パートナーズの公式情報では「6ヶ月〜2年程度」が一般的です。退任を急ぐのであれば、引継ぎ期間も見越して全体スケジュールを組む必要があります。
フェーズ別の期間と実務内容
各フェーズで「何をするのか」「なぜその期間がかかるのか」を、売り手視点で整理します。
フェーズ1: 事前検討・仲介会社選定(0〜数ヶ月)
仲介会社と正式契約する前の準備段階です。期間は人によって大きく異なり、半年以上かける人もいれば、知人の紹介で数週間で決める人もいます。
- 売却の目的(引退/後継者不在/選択と集中)を整理
- 譲れない条件(価格の下限、雇用維持、屋号存続、個人保証解除等)を明確化
- 2〜3社の仲介会社と面談し、担当者の実力・実績・手数料体系を比較
- 仲介会社 / FA / マッチングプラットフォームのどれを使うかを決定
関連記事: M&A仲介会社おすすめ比較 / M&A仲介手数料・成功報酬の仕組み / M&A 専任契約 vs 非専任契約 違い・選び方
フェーズ2: アドバイザリー契約・企業概要書(IM)作成(1〜2ヶ月)
仲介会社と秘密保持契約(NDA)とアドバイザリー契約を締結し、買い手候補に提示する「企業概要書(IM: Information Memorandum)」を作成するフェーズです。
- 決算書3期分・法人税申告書・定款・主要契約書・従業員名簿・許認可一覧を提出
- 仲介会社が自社の強み・事業モデル・収益構造をIMに落とし込む
- 簡易バリュエーション(企業価値算定)で売却希望価格のレンジを設定
このフェーズで資料が揃っていないと、その後のすべてのフェーズが後ろ倒しになります。決算書や契約書のデジタル化・整理が済んでいない会社では、準備だけで2〜3ヶ月かかることも珍しくありません。
フェーズ3: 買い手候補打診(1〜3ヶ月)
仲介会社が買い手候補をリストアップし、ノンネームシート(社名を伏せた概要書)で打診するフェーズです。
- ロングリスト(10〜30社程度)から関心を示した買い手にNDAを締結
- NDA締結後、IM(実名入り)を開示
- 買い手候補は社内稟議・経営会議で検討
このフェーズの期間は、業種の人気・規模・時期で大きく変わります。IT・調剤薬局・介護など買い手需要の高い業種は1ヶ月で複数社が関心を示すこともある一方、地方の小規模製造業では半年以上かかることもあります。
フェーズ4: トップ面談・意向表明書(LOI)受領(2週間〜1ヶ月)
関心を示した買い手候補(1〜3社)との間で、オーナー同士のトップ面談を行い、意向表明書(LOI)を受け取ります。
- トップ面談は1社あたり1〜2回
- LOIには想定価格レンジ・スキーム・従業員処遇・条件などが記載される
- 売り手はLOIを比較し、基本合意に進む相手を1社に絞り込む
フェーズ5: 基本合意書(MOU)締結(2週間〜1ヶ月)
絞り込んだ1社と基本合意書(MOU/LOI)を締結します。独占交渉権を与えるかどうかがこのフェーズの重要論点です。
- 価格レンジ・スキーム(株式譲渡/事業譲渡)・スケジュールなどを合意
- 独占交渉権の期間は一般的に2〜3ヶ月
- 法的拘束力は秘密保持・独占交渉権など限定的な条項のみ
フェーズ6: デューデリジェンス(DD)(1〜2ヶ月)
買い手側が弁護士・公認会計士・税理士を使って、売り手企業の財務・法務・事業を精査するフェーズです。
- 財務DD: 決算書の正確性、簿外債務、資産の実在性
- 法務DD: 契約関係、係争、コンプライアンス、許認可
- 事業DD: ビジネスモデル、顧客・取引先の持続性、主要人材の継続性
プルータス・マネジメントアドバイザリーの公式情報では、中小企業のDDは概ね1ヶ月〜1ヶ月半が目安。小規模案件では1〜2週間で完了する例もありますが、簿外債務や未払い残業が発見されると期間が延びます。
売り手視点では、DDで買い手から求められる資料・質問への回答スピードが期間を左右します。
関連記事: M&A DD 売り手の準備チェックリスト
フェーズ7: 最終条件交渉(2週間〜1ヶ月)
DDの結果を踏まえ、価格・表明保証の範囲・ロックアップ・アーンアウトなどを最終交渉します。
- DDで発見された論点による価格調整(減額交渉)への対応
- 表明保証・補償条項の範囲と上限の決定
- ロックアップ期間(売り手経営者の退任制約)の合意
関連記事: M&A ロックアップ条項とは(売り手の制約) / M&A テール条項とは 期間・注意点
フェーズ8: 最終契約書(SPA)締結(数日〜2週間)
最終条件を織り込んだ株式譲渡契約書(SPA)等を締結します。契約締結からクロージング(決済日)までに、法的な前提条件(許認可の取得、主要契約の更新承認など)を充足させます。
フェーズ9: クロージング(契約締結日〜1ヶ月)
代金決済・株券(または株主名簿書換)・印鑑・通帳等の引渡しを行い、M&Aが実行されます。
関連記事: M&A クロージングとは 手続き・流れ
フェーズ10: 引継ぎ期間(6ヶ月〜2年)
クロージング後、売り手経営者が一定期間は会社に残り、顧客・取引先・金融機関・従業員への引継ぎを行うのが一般的です。
- 大口取引先への挨拶回り
- 金融機関(メインバンク)との継続取引交渉
- 主要従業員・幹部候補への説明と関係性の引継ぎ
- 買い手経営陣の経営オペレーション支援
引継ぎ期間中は、売却代金の一部を成果連動で支払うアーンアウト条項が付いている場合もあります。
期間が短くなるケース・長くなるケース
同じ「中小企業のM&A」でも、次の条件で期間は大きく変動します。
期間が短くなる(3〜6ヶ月程度)代表的なケース
- 同業同士のM&Aで、既に取引関係・認知がある(買い手・売り手が初対面ではない)
- 買い手が明確な買収ニーズを持ち、社内の意思決定スピードが速い
- 売り手の決算書・契約書・組織図などが日頃から整備されている
- 株主が1名または経営者一族に集約されている(株式集約の手間がない)
- 業績が数年安定しており、簿外債務・労務問題がない
特に「同業の顔見知り買い手」「株主1名」「資料整備済み」の3条件が揃うと、3〜5ヶ月で完了する例が各社の公式情報で紹介されています。
期間が長期化する(1.5〜2年以上)代表的なケース
- 複数事業・複数拠点を抱える大規模・複雑案件
- 分散株主(疎遠な親族・少数株主が多数)で株式集約に時間がかかる
- DDで簿外債務・未払い残業・係争・違法建築等が発見される
- 海外の買い手企業で法規制・通貨・言語の差異がある
- 経営者の心情変化・相続発生・災害・経済ショックなど外部要因
- 価格・雇用条件で売り手と買い手の溝が埋まらない
M&Aロイヤルアドバイザリーの公式情報では、複雑案件では2〜3年かかった事例も紹介されています。クレジオ・パートナーズの実績では最長6年以上という極端なケースもあります。
売却期間を短縮する7つの準備ポイント
売り手として、期間を不必要に長引かせないための具体的な準備を整理します。
1. 資料を3ヶ月前から整える
最低限、以下の資料をPDF・Excelで即提出できる状態にしておきます。
- 決算書(損益計算書・貸借対照表)直近3期分
- 法人税申告書(別表含む)直近3期分
- 定款・商業登記簿謄本
- 株主名簿
- 主要な取引先契約書・賃貸借契約書
- 従業員名簿・就業規則・雇用契約書
- 許認可一覧
- 借入金一覧(保証人・担保の状況を含む)
- 固定資産台帳
日頃の整備不足で資料準備に2〜3ヶ月かかる会社は珍しくありません。
2. 株式を集約する
分散株主がいる場合、先に買取・整理して株主1名(または経営者一族のみ)の状態に近づけます。疎遠な親族株主・元従業員株主・少数株主が複数いると、買い手は100%取得を前提とするため、売却段階で株式集約に数ヶ月〜1年かかることがあります。
3. 譲れない条件を明確化する
価格・雇用維持・屋号存続・個人保証解除・引退時期など、優先順位を事前に決めておくと、交渉で迷いが減り期間が短縮します。
関連記事: 会社売却 個人保証・連帯保証 解除方法
4. 意思決定スピードを確保する
オーナー自身が判断者として即応できる体制を作ります。買い手からの質問・開示要求への回答が遅れると、そのままスケジュールが後ろにずれます。仲介会社・弁護士・税理士との連絡ラインも平日稼働で確保しておくことが重要です。
5. 経験豊富な仲介会社・担当者を選ぶ
プロセス管理とペースメーカー機能を任せられる相手を選びます。案件経験が浅い担当者だと、買い手との交渉・DDスケジュールで後手に回り、全体が間延びする原因になります。
関連記事: M&A仲介会社おすすめ比較 / 仲介会社の選び方ガイド
6. 決算期に合わせてスケジューリングする
決算直後は最新の決算書が揃っており、DD期間が短縮しやすい傾向があります。逆に決算期直前の相談だと「次の決算を待ってから正式依頼」になるケースもあります。
7. 従業員・取引先への説明タイミングを設計する
クロージング前に従業員や取引先へ漏洩すると、離職・取引停止・買い手の撤退につながります。誰にいつ伝えるかを仲介会社と設計しておくと、クロージング直前の混乱で期間が延びるのを防げます。
決算期・相続・個人保証解除との関係
M&A売却期間は、他の経営課題と密接に絡みます。スケジュールを組むうえで見落としやすいポイントをまとめます。
決算期との関係
- 決算直後(第1四半期)は売却準備の最適期:最新の確定決算が揃っており、IM作成・バリュエーション・DDがスムーズ
- 決算期末直前:買い手は「次期決算を待ちたい」と判断しがちで、案件が半年程度寝かされるケースがある
- 仲介会社と契約するタイミングを決算期から逆算するのが理想
相続・事業承継との関係
- 経営者が高齢で後継者不在の場合、売却プロセス中に相続が発生するリスクを考慮しておく必要があります
- 事業承継税制(特例措置)は期限付きの制度で、M&Aと併用する場合は税理士との事前調整が必須
- 相続発生後にM&Aを行う場合、株式が相続人に分散するため集約に時間がかかる
関連記事: 事業承継税制とは(特例措置の期限・要件)
個人保証解除との関係
経営者保証(個人保証)の解除は、クロージング時に金融機関と交渉する項目です。事前に「経営者保証に関するガイドライン」に沿った条件を整えておくと、クロージング直前の交渉期間を短縮できます。
関連記事: 会社売却 個人保証・連帯保証 解除方法
税金との関係
株式譲渡所得の税金は譲渡実行年の翌年に確定申告します。クロージング時期を年末近くにするか、年初にするかで納税タイミングが変わるため、税理士と事前に試算しておくとよいでしょう。
関連記事: 事業承継 税金・節税対策ガイド
仲介契約の専任期間と売却期間の関係
仲介会社との契約には、専任契約(その仲介会社1社のみに依頼)と非専任契約(複数社同時依頼)があります。専任契約の期間は一般的に6ヶ月〜1年です。
専任期間が売却期間とどう関係するか
- 専任期間内に買い手が見つからない場合、契約を更新するか、別の仲介会社へ切り替えるかの判断が発生
- 専任期間満了時点で価格感・対象条件の見直し(価格引き下げ・雇用条件緩和等)が必要になることも
- 複数の仲介会社を使う場合、ノンネームシートが複数経路から同じ買い手候補に届き混乱するリスクがあるため、非専任でも各社の動きを管理する必要がある
関連記事: M&A 専任契約 vs 非専任契約 違い・選び方 / M&A仲介会社の断り方・契約解除の方法
中途解約の「テール条項」に注意
契約解除後も一定期間(6ヶ月〜2年)は、仲介会社経由で紹介を受けた買い手と直接取引しても手数料が発生する「テール条項」があります。契約切り替えで期間が延びる場合は、テール条項の影響範囲を事前に確認しましょう。
関連記事: M&A テール条項とは 期間・注意点
公式統計で見る最新の中小企業M&A動向
期間を考えるうえで、市場全体の動きも押さえておくと判断材料になります。
2024〜2026年の最新データ
- 2024年のM&A件数は過去最多の4,700件(2025年版中小企業白書、民間調査ベース)
- 令和6年度(2024年度)の事業承継・引継ぎ支援センター(中小機構)の第三者承継成約件数は2,132件で過去最高を更新(2025年5月発表)
- 中小M&Aガイドライン第3版が2024年8月に公表され、M&A支援機関登録制度の運用が強化
過去最多の案件数が成立している一方、買い手側も選別を強めており、準備不足の売り手は競合案件に埋もれて期間が長期化する傾向があります。
「時間はリスク」という業界共通認識
みつきコンサルティングをはじめ複数の仲介会社が指摘する通り、検討期間が長引くほど次のリスクが高まります。
- 市場環境変化による買い手需要の減退
- 自社業績悪化による評価額の下落
- 情報漏洩による従業員・取引先の離反
- 経営者自身のモチベーション低下
「急がず焦らず」が基本ですが、"決めたら動く""動いたら止めない"というメリハリが結果的に好条件での売却につながります。
「●●日で売却」広告への警戒
プルータスなど複数の仲介会社が公式に警鐘を鳴らしている通り、極端に短期の売却をうたう広告は、IM作成・買い手打診・DD・条件交渉・クロージングのいずれかのフェーズに歪みが出て、結果として満足のいく条件を得られない恐れがあります。標準は6ヶ月〜1年という相場を頭に入れておきましょう。
こんな企業は早めに動くのがおすすめ/時間をかけた方がよい
早めに動くのがおすすめな企業
- 経営者が60代後半以上で、引継ぎ期間(6ヶ月〜2年)を含めた引退時期を逆算したい
- 後継者不在で、今後の業績悪化リスクが高い(経営者の健康不安、主要顧客の世代交代など)
- 主力事業が成長市場にあり、買い手需要が高い今が売り時
- 個人保証の総額が大きく、早期に保証解除したい
- 相続発生時に株式が親族に分散するリスクを回避したい
時間をかけた方がよい企業
- 売上・利益が一時的に落ち込んでおり、回復の見通しがある(1〜2年かけて業績を戻した方が評価が上がる)
- 分散株主の集約・未整理の契約関係など、内部課題が多い
- 決算数値が直近1年で改善傾向にあり、次期決算を待つ方が有利
- 業界のM&Aマーケットが一時的に冷え込んでいる(大型ショック直後など)
よくある質問(FAQ)
Q1. 「今から動けば、何月に譲渡できますか?」
仲介会社との契約から6ヶ月〜1年が標準なので、今月契約するなら半年後〜1年後(同年下期〜翌年上期)の譲渡実行が現実的な目安です。ただし、資料整備に時間がかかる場合や、買い手選定が難航する場合は、さらに3〜6ヶ月の余裕を見ておくと安全です。
Q2. 最短で3ヶ月で売却できますか?
同業の既存取引先が買い手になる、株主が1名、資料がすぐに揃う、DDで大きな発見がない、などの条件が揃えば最短3ヶ月で完了する事例はあります。ただし、一般的な仲介ルートで3ヶ月を前提にすると条件交渉で不利になるため、急ぎたい理由があるなら仲介会社に事情を率直に伝えたうえで現実的なスケジュールを組みましょう。
Q3. 検討開始から何年もかかるケースは何が原因ですか?
大きく分けて3つのパターンがあります。1つ目は規模・複雑性(複数事業・複数拠点・分散株主)、2つ目は内部課題の発覚(簿外債務・係争・労務問題)、3つ目は外部要因(経営者の心情変化・相続発生・市場ショック)です。中でも「分散株主の集約」と「簿外債務の発見」は期間延長の典型パターンです。
Q4. 仲介会社と契約しないと期間の交渉もできませんか?
秘密保持契約(NDA)だけを結んで相談するのは可能です。ただし、仲介会社が本格的に動くのはアドバイザリー契約締結後なので、期間短縮を本気で目指すなら契約締結を先送りしない方がよいでしょう。複数社と面談して比較検討する期間は1〜2ヶ月が目安です。
Q5. 引継ぎ期間が長いと、売却代金はいつ受け取れますか?
売却代金本体はクロージング時に一括で受け取るのが一般的です。引継ぎ期間中は顧問契約などで月額報酬を受け取る形式が多く、売却代金とは別物です。ただし、アーンアウト条項(譲渡後の業績連動対価)がある場合は、一部が引継ぎ期間中に分割で支払われます。
Q6. 決算期直前の相談はやめた方がいいですか?
やめる必要はありません。むしろ「次期決算を待って本格始動する」前提で、決算期末の3〜6ヶ月前から仲介会社選定・資料整備を進めるのは合理的な進め方です。決算確定後すぐに動けるように準備しておけば、結果的に期間短縮につながります。
Q7. 税金・法律の最終判断は誰に相談すべきですか?
税務(株式譲渡所得税・退職金設計・事業承継税制)は税理士、契約・表明保証は弁護士、企業価値算定は公認会計士への相談が必要です。仲介会社が紹介する場合もありますが、独立性の観点から自社の顧問税理士・弁護士とのセカンドオピニオンも検討するのをおすすめします。本記事の内容は一般的な情報であり、個別の判断は必ず専門家にご相談ください。
まとめ
- M&A売却にかかる期間は一般的に6ヶ月〜1年、平均約9ヶ月。最短3ヶ月、長期で2年以上の幅がある
- 12ヶ月モデルで仲介契約〜クロージングまでを10フェーズに分解すると、各フェーズの期間感が見える
- 期間を左右する最大の要因は資料整備・株主集約・買い手との相性・DDでの発見事項・意思決定スピード
- 売却を決めたら早く動くことが、市場環境変化・業績悪化・情報漏洩などのリスクを抑える
- 引継ぎ期間(6ヶ月〜2年)も含めて、引退時期から逆算した総スケジュールを組むのが理想
- 税務・法務の最終判断は必ず税理士・弁護士・公認会計士へ相談を
関連記事:
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- M&A仲介手数料・成功報酬の相場
- M&A 専任契約 vs 非専任契約 違い・選び方
- 会社売却 個人保証・連帯保証 解除方法
- M&A クロージングとは 手続き・流れ
- 事業承継税制とは(特例措置の期限・要件)
免責事項:本記事の内容は2026年4月時点の公開情報に基づいています。実際のM&A売却期間は案件ごとに大きく異なります。個別の判断にあたっては、必ずM&A仲介会社・税理士・弁護士・公認会計士等の専門家にご相談ください。手数料・実績・期間の数値は各社公式サイトおよび中小企業庁公表資料をもとにしており、最新の数値は各社公式情報をご確認ください。
