M&A仲介手数料の種類と発生タイミング

M&A仲介会社に売却支援を依頼すると、主に6種類の手数料が発生する。すべてが必ずかかるわけではなく、会社によって「無料」としている項目が異なる。
手数料の種類 | 内容 | 発生タイミング | 相場 |
|---|---|---|---|
相談料 | 初回相談・簡易企業評価 | 相談時 | 無料(大半の会社) |
着手金 | 仲介契約締結時の初期費用 | 契約締結時 | 無料〜200万円程度 |
月額報酬(リテイナーフィー) | 活動期間中の固定報酬 | 毎月 | 無料〜数十万円/月 |
中間報酬(中間金) | 基本合意締結時の中間費用 | 基本合意時 | 成功報酬の10〜30%、または100万〜200万円程度 |
デューデリジェンス費用 | 買収監査費用(買い手負担が多い) | DD実施時 | 数十万〜数百万円 |
成功報酬 | M&A成約時の報酬(手数料の大部分) | 最終契約締結時 | 取引金額の1〜5%(レーマン方式) |
出典:各社公式サイト、fundbook公式コラム(2026年4月確認)
売り手が特に注意すべき3つのポイント
1. 着手金と中間金は「戻らないお金」
着手金や中間金は、仮にM&Aが途中で破談になっても返金されないのが一般的だ。着手金ありの仲介会社を選ぶ場合は、この点を契約前に必ず確認したい。
2. 「完全成功報酬制」と「着手金無料」は意味が違う
「着手金無料」であっても中間金が発生する会社がある。成約まで一切費用がかからない「完全成功報酬制」と混同しないように注意が必要だ。
3. デューデリジェンス費用は仲介手数料とは別
買収監査(デューデリジェンス)の費用は通常買い手が負担するが、売り手側にも弁護士・税理士への相談費用が別途かかることがある。仲介手数料だけでなく、M&A全体でかかるコストを見積もっておくことが重要だ。
レーマン方式とは? 計算基準の違いで手数料が大きく変わる
M&A仲介手数料の大部分を占める「成功報酬」は、ほとんどの仲介会社がレーマン方式という累進料率体系で算出している。取引金額が大きくなるほど料率が下がる仕組みだ。
レーマン方式の標準料率表
取引金額の部分 | 料率 |
|---|---|
5億円以下 | 5% |
5億円超〜10億円以下 | 4% |
10億円超〜50億円以下 | 3% |
50億円超〜100億円以下 | 2% |
100億円超 | 1% |
この料率表自体は多くの会社で共通だが、「何を取引金額とみなすか」(計算基準)が会社によって異なる。ここが手数料比較で最も重要なポイントだ。
計算基準の種類と手数料への影響
計算基準 | 内容 | 手数料の傾向 | 採用会社例 |
|---|---|---|---|
株式価額 | 実際の株式取引額のみ | 最も低くなりやすい | M&Aキャピタルパートナーズ |
オーナー受取額 | 株主が実際に受け取る金額 | 低くなりやすい | ストライク |
譲渡価額 | 譲渡対価(負債除く) | 中程度 | M&A総合研究所、M&Aロイヤルアドバイザリー |
企業価値 | 株式価額+有利子負債 | やや高くなる | 一部FA系 |
移動総資産(時価総資産) | 株式価額+負債総額 | 最も高くなりやすい | 日本M&Aセンター、fundbook |
出典:M&Aキャピタルパートナーズ公式、各社公式サイト(2026年4月確認)
計算基準の違いでどれだけ差が出るか? 具体的シミュレーション
条件:売却価額10億円、負債5億円の中小企業の場合
計算基準 | ベース金額 | 概算手数料 | 差額(株式価額比) |
|---|---|---|---|
株式価額(10億円) | 10億円 | 約4,500万円 | ― |
譲渡価額(10億円) | 10億円 | 約4,500万円 | ±0円 |
企業価値(10億+有利子負債3億=13億円)※ | 13億円 | 約5,400万円 | +約900万円 |
移動総資産(10億+負債5億=15億円) | 15億円 | 約6,000万円 | +約1,500万円 |
※有利子負債を3億円と仮定
同じ案件でも計算基準の違いだけで最大1,500万円の差が出る。 仲介会社を比較する際は、料率だけでなく「何をベースに計算するか」を必ず確認すべきだ。
主要7社の手数料体系を徹底比較【2026年4月時点】

現時点で確認できる主要7社の手数料体系を一覧で比較する。なお、手数料は改定される場合があるため、契約前に必ず各社の公式サイトや担当者に最新情報を確認してほしい。
手数料比較一覧表
会社名 | 着手金 | 中間金 | 成功報酬 | 最低報酬額 | 計算基準 |
|---|---|---|---|---|---|
日本M&Aセンター | あり | 要問い合わせ | レーマン方式 | 2,200万円(税別) | 移動総資産 |
M&Aキャピタルパートナーズ | 無料 | 成功報酬の約10% | レーマン方式 | 公式非公表 | 株式価額 |
M&A総合研究所 | 無料 | 売り手は無料 | レーマン方式 | 2,500万円 | 譲渡価額 |
ストライク | 無料 | 100万〜300万円 | レーマン方式 | 実質2,000万円(税別) | オーナー受取額 |
バトンズ | 無料 | 無料 | 成約価格の2〜5% | 35万円〜 | 成約価格 |
fundbook | 無料 | 成功報酬の10% | レーマン方式 | 2,500万円 | 時価総資産 |
M&Aロイヤルアドバイザリー | 無料 | 無料 | レーマン方式 | 未確認 | 譲渡対価 |
出典:各社公式サイト(2026年4月3日確認)。M&Aキャピタルパートナーズの最低報酬額は公式非公表(複数メディアでは2,750万円との記載あり)。fundbookの料金体系は複数メディア情報に基づく(公式料金ページの直接確認は2026年4月時点で未完了)。
各社の手数料体系の特徴
日本M&Aセンター
業界最大手で累計成約9,000件超の実績を持つ(出典:日本M&Aセンター公式サイト、2026年4月確認)。唯一「着手金あり」を公式に採用しているが、同社はこれを「本気度の高い案件を集めるフィルター」と説明している。計算基準は移動総資産ベースのため、負債の大きい企業は手数料が高くなる傾向がある。最低報酬額は2,200万円(税別)で、小規模案件には向きにくい。
公式サイト:https://www.nihon-ma.co.jp/service/fee/
M&Aキャピタルパートナーズ
株式価額ベースのレーマン方式(株価レーマン)を創業以来採用しており、「支払手数料率の低さNo.1」を公式に標榜している。負債を計算基準に含まないため、同一案件であれば移動総資産ベースの会社より手数料が低くなる。着手金は無料だが、基本合意時に成功報酬の約10%が中間報酬として発生する。
公式サイト:https://www.ma-cp.com/about/fee/
公式計算例: 株式譲渡対価5億円 → 成功報酬2,500万円(税別)、中間報酬250万円(税別)
M&A総合研究所
売り手企業向けの「完全成功報酬制」が最大の特徴。 着手金・中間金ともに無料で、成約まで一切費用が発生しない。計算基準は譲渡価額ベース(負債を含まない)。最短49日での成約実績をアピールしており、企業価値評価レポートも無料で作成する。
公式サイト:https://masouken.com/
ストライク
「オーナー受取額レーマン」を採用し、売り手が実際に手にする金額をベースに手数料を算出する。売却額から手数料を引いた手取りがマイナスになるリスクを軽減する仕組みだ。公認会計士が多数在籍しており、財務面の専門性に強み。中間金は資産総額に応じ100万〜300万円と明確に開示している。
公式サイト:https://www.strike.co.jp/feature/fee.html
中間金の詳細:
- 資産総額10億円以下:100万円
- 資産総額10億円超〜50億円:200万円
- 資産総額50億円超:300万円
バトンズ(BATONZ)
M&Aマッチングプラットフォームとして他社とビジネスモデルが異なる。 小規模案件(売却額数千万円〜数億円)に強く、最低報酬額が35万円〜と大幅に低い。2026年4月にIPO(上場)し、累計成約数5,000件超(出典:バトンズ公式サイト、2026年4月確認)。売り手は基本サービス無料だが、会社譲渡にはプレミアムサポート(有料)が必要。
公式サイト:https://batonz.jp/
売り手の手数料体系:
- 基本サービス:無料
- サポートサービス:成約価格500万円未満で50万円〜、4,000万円以上は成約価格の5%
- プレミアムサポート:成約価格1,000万円未満で200万円〜、2億円以上は成約価格の5%
fundbook(ファンドブック)
着手金・月額報酬無料、中間報酬は成功報酬の10%。テクノロジーを活用したマッチングに特徴がある。ただし、計算基準が時価総資産(負債含む)ベースのため、負債の多い企業は手数料が高くなる点に注意。5億円以下の案件は一律2,500万円。
※公式料金ページの直接確認は2026年4月時点で未完了。複数メディア情報に基づくため、契約前に必ず公式に確認してほしい
M&Aロイヤルアドバイザリー
着手金・月額報酬・中間報酬すべて無料の完全成功報酬制を採用。計算基準は譲渡対価ベース(負債を含まない)で、売り手にとって比較的有利な条件設定。2019年設立と比較的新しい会社だが、完全成功報酬制と負債除外の計算基準が評価されている。
公式サイト:https://ma-la.co.jp/fee/
公式計算例: 譲渡価額8億円 → 5億円×5%+3億円×4% = 3,700万円
売却額帯別の手数料シミュレーション

「自分の会社を売却したら手数料はいくらになるのか」を判断するために、売却額1億円・3億円・5億円・10億円の4パターンでシミュレーションした。
シミュレーション条件
- 負債額は売却額の50%と仮定
- レーマン方式の標準料率で計算
- 最低報酬額が計算結果を上回る場合は最低報酬額を適用
- 中間金は別途発生するため含めていない
- 税別表記
売却額1億円(負債5,000万円)の場合
会社名 | 計算ベース | 計算上の手数料 | 適用額(最低報酬考慮) | 実質手数料率 |
|---|---|---|---|---|
日本M&Aセンター | 1.5億円 | 750万円 | 2,200万円 | 22.0% |
M&Aキャピタルパートナーズ | 1億円 | 500万円 | 公式非公表(※) | ― |
M&A総合研究所 | 1億円 | 500万円 | 2,500万円 | 25.0% |
ストライク | 1億円 | 500万円 | 2,000万円 | 20.0% |
バトンズ(プレミアム) | 1億円 | 500万円 | 500万円 | 5.0% |
fundbook | 1.5億円 | 750万円 | 2,500万円 | 25.0% |
M&Aロイヤルアドバイザリー | 1億円 | 500万円 | 未確認 | ― |
※M&Aキャピタルパートナーズの最低報酬額は公式非公表。複数メディアでは2,750万円との情報あり
注目ポイント: 売却額1億円規模では、大手仲介会社はほぼすべて最低報酬額が適用され、実質手数料率が20%を超える。この規模ではバトンズのようなプラットフォーム型が費用面で圧倒的に有利だ。
売却額3億円(負債1.5億円)の場合
会社名 | 計算ベース | 計算上の手数料 | 適用額 | 実質手数料率 |
|---|---|---|---|---|
日本M&Aセンター | 4.5億円 | 2,250万円 | 2,250万円 | 7.5% |
M&Aキャピタルパートナーズ | 3億円 | 1,500万円 | 公式非公表 | ― |
M&A総合研究所 | 3億円 | 1,500万円 | 2,500万円 | 8.3% |
ストライク | 3億円 | 1,500万円 | 2,000万円 | 6.7% |
バトンズ(プレミアム) | 3億円 | 1,500万円 | 1,500万円 | 5.0% |
fundbook | 4.5億円 | 2,250万円 | 2,500万円 | 8.3% |
M&Aロイヤルアドバイザリー | 3億円 | 1,500万円 | 1,500万円 | 5.0% |
注目ポイント: 3億円規模でも、移動総資産ベースの会社(日本M&Aセンター、fundbook)は計算ベースが膨らむため割高になりやすい。ストライクやM&Aロイヤルアドバイザリーが費用面では有利。
売却額5億円(負債2.5億円)の場合
会社名 | 計算ベース | 計算上の手数料 | 適用額 | 実質手数料率 |
|---|---|---|---|---|
日本M&Aセンター | 7.5億円 | 3,500万円 | 3,500万円 | 7.0% |
M&Aキャピタルパートナーズ | 5億円 | 2,500万円 | 2,500万円 | 5.0% |
M&A総合研究所 | 5億円 | 2,500万円 | 2,500万円 | 5.0% |
ストライク | 5億円 | 2,500万円 | 2,500万円 | 5.0% |
バトンズ(プレミアム) | 5億円 | 2,500万円 | 2,500万円 | 5.0% |
fundbook | 7.5億円 | 3,500万円 | 3,500万円 | 7.0% |
M&Aロイヤルアドバイザリー | 5億円 | 2,500万円 | 2,500万円 | 5.0% |
注目ポイント: 5億円規模になると、多くの会社でレーマン方式の計算結果が最低報酬額を上回り始める。計算基準の違いが手数料差に直結し、移動総資産ベースと株式価額ベースで1,000万円の差が出る。
売却額10億円(負債5億円)の場合
会社名 | 計算ベース | 計算上の手数料 | 適用額 | 実質手数料率 |
|---|---|---|---|---|
日本M&Aセンター | 15億円 | 6,000万円 | 6,000万円 | 6.0% |
M&Aキャピタルパートナーズ | 10億円 | 4,500万円 | 4,500万円 | 4.5% |
M&A総合研究所 | 10億円 | 4,500万円 | 4,500万円 | 4.5% |
ストライク | 10億円 | 4,500万円 | 4,500万円 | 4.5% |
fundbook | 15億円 | 6,000万円 | 6,000万円 | 6.0% |
M&Aロイヤルアドバイザリー | 10億円 | 4,500万円 | 4,500万円 | 4.5% |
注目ポイント: 10億円規模では、計算基準の違いだけで最大1,500万円の差が生じる。大型案件ほど計算基準が手数料に与える影響が大きい。
売却規模別|仲介会社の選び方マトリクス

手数料シミュレーションと各社の特徴を踏まえ、売却規模別に向いている仲介会社を整理した。
売却額1億円以下の企業
向いている仲介会社:バトンズ
この規模では大手仲介会社の最低報酬額(2,000万〜2,500万円)が適用され、実質手数料率が20%を超えてしまう。バトンズは最低報酬額が35万円〜と大幅に低く、小規模案件に特化したマッチングプラットフォームとして合理的な選択肢だ。
ただし、バトンズはプラットフォーム型のため、専任のアドバイザーが交渉を全面サポートする「フルサービス型」の仲介とはサポート体制が異なる。売却交渉に不安がある場合は、プレミアムサポート(有料)の利用を検討したい。
売却額1億〜5億円の企業
向いている仲介会社:ストライク、M&Aロイヤルアドバイザリー、M&A総合研究所
中規模案件では、「着手金無料」「計算基準が負債を含まない」会社が費用面で有利になる。
- ストライク:オーナー受取額ベースで最低報酬額2,000万円。公認会計士の専門性
- M&Aロイヤルアドバイザリー:完全成功報酬制、譲渡対価ベース
- M&A総合研究所:売り手完全成功報酬制、譲渡価額ベース。ただし最低報酬額は2,500万円
この規模帯では最低報酬額の差が判断材料になる。ストライクの2,000万円とM&A総合研究所の2,500万円では、500万円の差がある。
売却額5億〜10億円の企業
向いている仲介会社:M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク、M&A総合研究所
この規模になるとレーマン方式の計算結果が最低報酬額を超え始め、計算基準の違いが手数料差に直結する。
- M&Aキャピタルパートナーズ:株式価額ベースで最も手数料が低くなりやすい。大型案件の実績豊富
- ストライク:オーナー受取額ベースで手数料が抑えられる
- M&A総合研究所:譲渡価額ベース、売り手は完全成功報酬制
売却額10億円超の企業
向いている仲介会社:日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ
大型案件では、手数料の絶対額よりも「適切な買い手を見つけられるか」が重要になる。
- 日本M&Aセンター:業界最大手で累計9,000件超の実績。買い手ネットワークの広さが強み。手数料は移動総資産ベースで割高だが、大型案件では実質手数料率が下がる
- M&Aキャピタルパートナーズ:株式価額ベースで手数料を抑えつつ、上場大手としての信頼性と実績を兼ね備える
「完全成功報酬制」の落とし穴|手数料だけで選んではいけない理由
「完全成功報酬制=売り手にとってベスト」とは限らない。手数料体系の違いにはそれぞれメリット・デメリットがある。
完全成功報酬制のメリットとデメリット
メリット:
- 成約まで費用が一切かからないため、売り手の初期リスクがゼロ
- 途中で断念しても金銭的な損失がない
デメリット:
- 仲介会社が早期成約を優先し、売り手にとって最適でない条件での成約を急ぐ可能性がある
- 着手金がないため、案件の優先度が下がるリスクがある(着手金ありの案件が優先される構造)
着手金ありの仲介会社を選ぶメリット
日本M&Aセンターのように着手金を設けている会社は、「本気度の高い売り手・買い手が集まる」というメリットがある。着手金が一種のフィルターとして機能し、成約可能性の低い案件が排除されるため、マッチングの質が上がるという見方もある。
手数料以外に確認すべき5つのポイント
- 担当アドバイザーの経験と専門性 — 業界経験・案件規模の得意領域
- 買い手ネットワークの広さ — 自社の業種・規模に合う買い手候補がどれだけいるか
- M&A支援機関登録の有無 — 中小企業庁の登録制度に登録しているかどうか
- 利益相反に関する説明 — 仲介会社は売り手・買い手の双方から報酬を受け取るため、利益相反リスクがある。この点をどのように開示・管理しているか
- サポートの範囲 — 企業価値評価、デューデリジェンス支援、契約書作成サポートなど、成功報酬に含まれるサービスの範囲
仲介手数料以外の「隠れコスト」も把握しておこう
M&A仲介手数料だけがM&Aにかかる費用ではない。売り手側にも以下の費用が別途発生する可能性がある。
費用項目 | 概算費用 | 備考 |
|---|---|---|
弁護士費用 | 50万〜300万円 | 契約書レビュー・法務DD対応 |
税理士・会計士費用 | 30万〜200万円 | 税務シミュレーション・確定申告 |
株式価値評価(第三者評価) | 50万〜200万円 | 仲介会社が無料提供する場合あり |
表明保証保険 | 取引額の1〜3% | 加入任意。リスクヘッジとして |
※金額は案件規模・複雑さにより大きく異なる。上記は一般的な目安
※M&Aに伴う税金(譲渡所得税、相続税評価への影響等)や手数料の会計処理は個別事情により大きく異なります。実際の判断は税理士・弁護士等の専門家にご相談ください。
中小M&Aガイドライン第3版に基づく仲介会社選定チェックリスト
2024年8月に経済産業省が公表した「中小M&Aガイドライン第3版」では、手数料の透明化と詳細説明義務が強化された(出典:経済産業省プレスリリース、2024年8月30日)。このガイドラインに基づき、仲介会社と契約する前に確認すべき項目をチェックリストとしてまとめた。
契約前に必ず確認する10項目
- 手数料の種類と金額 — 着手金・中間金・成功報酬のそれぞれの有無と金額
- 成功報酬の計算基準 — 移動総資産/株式価額/譲渡価額のどれをベースにするか
- レーマン方式の料率 — 標準料率との差異があるか
- 最低報酬額 — 金額と適用条件
- 手数料の発生タイミングと支払条件 — いつ、どのように支払うか
- 破談時の返金ポリシー — 中間金・着手金は返金されるか
- M&A支援機関登録の有無 — 中小企業庁の登録制度に登録しているか(M&A支援機関検索で確認可能)
- 利益相反の開示と管理方法 — 仲介の場合、双方代理のリスクをどう管理するか
- 専任条項の有無と期間 — 他社との並行相談が制限されるか、解約条件は何か
- サポート範囲の明確化 — 企業価値評価・DD支援・契約書作成等、成功報酬に含まれるサービスの範囲
出典:経済産業省「中小M&Aガイドライン(第3版)」(2024年8月30日公表)
こんな企業にはこの仲介会社がおすすめ
おすすめの組み合わせ
こんな企業 | おすすめの仲介会社 | 理由 |
|---|---|---|
売却額1億円以下の小規模事業 | バトンズ | 最低報酬額が圧倒的に低い。小規模案件に特化 |
初期費用を一切かけたくない | M&A総合研究所、M&Aロイヤルアドバイザリー | 完全成功報酬制で成約まで費用ゼロ |
負債が多い企業 | M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク | 計算基準に負債を含まないため手数料を抑えられる |
売却額5億円以上の中堅企業 | M&Aキャピタルパートナーズ | 株式価額ベースで手数料が最も低くなりやすい |
大型案件で豊富な買い手ネットワーク重視 | 日本M&Aセンター | 業界最大手の実績・ネットワーク。手数料よりも成約の質を重視する場合 |
財務面の専門的サポートが欲しい | ストライク | 公認会計士多数在籍。オーナー受取額ベースで手取りが明確 |
おすすめしないケース
こんな企業 | おすすめしない仲介会社 | 理由 |
|---|---|---|
売却額1億円以下 | 日本M&Aセンター、M&A総合研究所、fundbook | 最低報酬額が売却額の20%超になる |
負債比率が高い(負債>純資産) | 日本M&Aセンター、fundbook | 移動総資産ベースのため手数料が大幅に膨らむ |
交渉経験がなく手厚いサポートが必要 | バトンズ(基本サービス) | プラットフォーム型のため、フルサービス仲介と比べサポートが限定的 |
よくある質問(FAQ)
Q. M&A仲介手数料の相場はいくらですか?
成功報酬はレーマン方式で取引金額の1〜5%が標準的な料率だが、実際の手数料総額は計算基準と最低報酬額に大きく左右される。売却額5億円の場合、会社によって2,500万円〜3,500万円程度の幅がある。
Q. 「レーマン方式」と「成功報酬」は同じ意味ですか?
レーマン方式は成功報酬の「算出方法」であり、成功報酬はM&A成約時に発生する報酬の「種類」だ。成功報酬をレーマン方式で算出するのが一般的だが、バトンズのように「成約価格の一定割合」で計算する会社もある。
Q. 手数料が安い仲介会社を選ぶべきですか?
一概には言えない。手数料が安くても、買い手ネットワークが狭ければ売却先の選択肢が限られ、最終的な売却額が低くなる可能性がある。手数料の安さだけでなく、担当者の経験、買い手候補の数、サポート体制を総合的に判断することが重要だ。
Q. 仲介会社に支払う手数料は税務上どう扱われますか?
M&A仲介手数料は一般的に「支払手数料」として経費処理されるが、個人が株式を売却する場合の譲渡所得計算における取扱いは異なる。※具体的な税務処理については税理士に相談することをおすすめする。
Q. 複数の仲介会社に同時に相談してもいいですか?
初回相談の段階では複数社に相談するのが望ましい。ただし、仲介契約を締結する際に「専任条項」がある場合、他社との並行利用が制限される。契約前に専任条項の有無と期間を必ず確認したい。
Q. 中小M&Aガイドラインの「登録支援機関」とは何ですか?
中小企業庁が運営する「M&A支援機関登録制度」に登録された仲介会社・FAのこと。登録機関は手数料体系の開示義務があり、一定の品質基準を満たしている。仲介会社選びの際はM&A支援機関検索サイトで登録状況を確認できる。
まとめ|M&A仲介手数料を比較する際の3つの鉄則
1. 「レーマン方式」の計算基準を必ず確認する
同じレーマン方式でも、移動総資産ベースと株式価額ベースでは数百万〜数千万円の差が出る。「料率が同じだから同じ手数料」ではない。
2. 最低報酬額が自社の売却規模に見合うか確認する
売却額が小さいほど、最低報酬額の実質負担率が高くなる。売却額1億円以下なら大手仲介会社の最低報酬額は割高になるため、バトンズのようなプラットフォーム型も検討すべきだ。
3. 手数料の安さだけで選ばない
完全成功報酬制は売り手のリスクが低いが、それだけで選ぶのは危険だ。買い手ネットワーク、担当者の質、利益相反の管理体制など、手数料以外の要素も含めて総合的に判断したい。
M&Aは経営者にとって一生に一度の重大な意思決定だ。まずは複数の仲介会社に相談し、手数料体系の説明を受けた上で比較検討することをおすすめする。
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