LOI(Letter of Intent=意向表明書)とは、M&Aにおいて買い手企業が売り手企業に対し「御社を買収したい」という意思と基本的な条件を伝えるために提出する書面です。 法的拘束力は原則としてなく、提出は法律上の義務でもありませんが、M&A交渉をスムーズに進めるうえで重要な役割を果たします。
この記事でわかること:
- 意向表明書(LOI)の定義とM&Aプロセスにおける位置づけ
- 記載される主な11項目の内容
- 基本合意書(MOU)や最終契約書(DA)との違い
- 法的拘束力が生じる条項・生じない条項
- 売り手オーナーが意向表明書を受け取ったときに確認すべきポイント
- 実務上よくあるトラブルと対処法
会社の売却を検討中のオーナー、M&Aアドバイザーから「意向表明書が届きました」と連絡を受けた方を想定して、M&A仲介大手各社の公式情報と弁護士の見解をもとに解説します。
関連記事: M&Aの全体像や売却の流れを先に知りたい方は「会社売却とは?流れ・費用・注意点を完全ガイド」をご覧ください。
M&AのLOI(意向表明書)とは — 定義と基本的な役割
意向表明書(LOI:Letter of Intent)は、買い手企業が売り手企業に対して一方的に差し入れる書面です。「この条件で買収したい」という意思と、買収に関する基本的な諸条件をまとめたもので、A4用紙2〜3枚程度が一般的なボリュームです。
ポイントは「一方的な意思表示」という点です。売り手と買い手の双方が合意して作成する「基本合意書(MOU)」とは性質が異なります。意向表明書はあくまで買い手の意思を伝える書面であり、売り手はこれを受け取ったうえで、交渉を進めるかどうかを判断します。
意向表明書の3つの基本的な役割
役割 | 内容 |
|---|---|
買い手の本気度を示す | 文書で意思と条件を明示することで、口頭のやり取りだけでは伝わらない買収への真剣さを伝える |
売り手の判断材料になる | 複数の買い手候補がいる場合、誰と交渉を進めるかを比較検討するための資料になる |
条件のすり合わせの起点になる | 価格帯・スキーム・M&A後の方針などを早い段階で明示することで、以降の交渉が効率的に進む |
(出典:M&Aキャピタルパートナーズ公式コラム、M&A総合研究所公式コラム、確認日:2026年4月12日)
M&Aプロセス全体における意向表明書の位置づけ

意向表明書はM&Aプロセスの初期〜中期段階で登場します。全体の流れのなかでどこに位置するかを把握しておくと、売り手として「今どの段階にいるのか」が明確になります。
M&Aプロセスの全体フローと書類の関係
ステップ | 段階 | 主な書類 | 売り手の対応 |
|---|---|---|---|
1 | 秘密保持 | NDA(秘密保持契約) | 買い手と相互に締結 |
2 | 情報開示 | 企業概要書(IM) | 仲介会社を通じて買い手に開示 |
3 | 面談 | — | トップ面談で買い手と直接対話 |
4 | 意思表示 | 意向表明書(LOI) ← 今回の解説対象 | 買い手から受け取り、内容を精査 |
5 | 基本合意 | 基本合意書(MOU) | 双方が署名。独占交渉権の付与が一般的 |
6 | 詳細調査 | DD資料一式 | デューデリジェンスへの対応 |
7 | 最終契約 | 最終契約書(DA/SPA) | 条件確定・最終署名 |
8 | 完了 | 各種届出 | クロージング・引き渡し |
提出タイミングのパターン
意向表明書の提出タイミングはケースバイケースです。
- トップ面談の前に提出を求められるケース — 複数の買い手候補がいる場合。面談する相手を絞り込むためにLOIの提出が先行する
- トップ面談の後に提出されるケース — 面談で売り手の事業内容・経営方針を確認したうえで、具体的な条件を提示する
- 省略されるケース — 買い手候補が1社のみで、双方の意向が概ね一致している場合(後述)
(出典:M&Aキャピタルパートナーズ、fundbook、レバレジーズM&Aアドバイザリー各社公式コラム、確認日:2026年4月12日)
意向表明書に記載される主な11項目

意向表明書にどのような内容が書かれるかは、売り手にとって特に重要です。記載される項目を知っておけば、受け取った際に「何が書かれていて当然か」「何が欠けているか」を判断できます。
以下は、M&A仲介大手各社の公式情報を統合した主要11項目です。
記載項目一覧
# | 項目 | 内容・売り手が注目すべきポイント |
|---|---|---|
1 | 買い手の企業概要 | 商号・代表者・所在地・資本金・事業内容・財務状況。どんな会社が買おうとしているかの基本情報 |
2 | M&Aの目的・理由 | 新市場参入・事業強化・ポートフォリオ多角化など。なぜ自社を買いたいのかを確認する |
3 | M&Aのスキーム(手法) | 株式譲渡・事業譲渡・合併・会社分割など。スキームによって売り手の税金や手残り額が大きく変わる |
4 | 希望買収価格・算定根拠 | 価格帯(「○億円〜○億円」のレンジ表記が一般的)と算定方法。根拠の妥当性が最重要チェックポイント |
5 | 価格修正要因 | DD(デューデリジェンス)結果により価格が変動する条件。どのような場合に減額されうるかを事前に把握 |
6 | 買収資金の調達方法 | 自己資金・銀行借入・第三者割当増資など。本当に資金を用意できるかの確認材料 |
7 | M&A後の経営方針 | 売り手企業の運営方針・商号の取り扱い・組織再編計画。自社のブランドや事業がどうなるか |
8 | 役員・従業員の処遇 | 既存役員の留任・従業員の雇用継続・待遇変更の有無。売り手オーナーにとって最も気になる項目の一つ |
9 | DDの範囲・方法 | 調査項目・実施期間・実施体制。過度に広範囲なDDは売り手側の負担増につながる |
10 | スケジュール | 基本合意締結・DD期間・最終契約・クロージングの想定日程。全体のタイムラインを把握できる |
11 | 独占交渉権・有効期限・法的拘束力 | 独占交渉権の期間(1〜1.5ヶ月が一般的)・LOIの有効期限・法的拘束力の範囲 |
すべての項目が必ず記載されるわけではなく、案件の性質・規模・当事者間の関係によって記載内容は異なります。ただし、4(買収価格)・7(経営方針)・8(従業員処遇)は売り手にとって特に重要です。これらが曖昧なLOIを受け取った場合は、M&Aアドバイザーを通じて具体化を求めることをおすすめします。
(出典:M&Aキャピタルパートナーズ、ジョブカンM&Aガイド、タナベコンサルティング各社公式コラム、確認日:2026年4月12日)
意向表明書と基本合意書(MOU)の違い【比較表】

M&Aに関わる書面のなかで、意向表明書(LOI)と最も混同されやすいのが基本合意書(MOU:Memorandum of Understanding)です。
結論から言うと、LOIは「買い手の一方的な意思表示」、MOUは「双方の合意確認」という根本的な違いがあります。
LOI・MOU・DA(最終契約書)の3文書比較
LOIとMOUだけでなく、最終契約書(DA)まで含めた3文書の違いを整理すると、M&Aプロセスの全体像がより明確になります。
比較項目 | 意向表明書(LOI) | 基本合意書(MOU) | 最終契約書(DA/SPA) |
|---|---|---|---|
英語名 | Letter of Intent | Memorandum of Understanding | Definitive Agreement / Stock Purchase Agreement |
性質 | 買い手の一方的な意思表示 | 双方の合意文書 | 双方の最終合意・法的契約 |
署名者 | 買い手のみ(原則) | 双方が署名・捺印 | 双方が署名・捺印 |
タイミング | トップ面談前後 | DD実施前 | DD完了後 |
法的拘束力 | 原則なし(一部例外あり) | 一部条項にあり | 全面的にあり |
内容の具体性 | 基本的・概括的 | 具体的 | 最も詳細 |
目的 | 買い手の意向・条件を伝える | 基本条件の合意を確認する | 最終的な権利義務を確定する |
省略の可否 | 省略されることがある | ほぼ省略されない | 省略不可 |
売り手オーナーが押さえるべきポイント: LOIの段階ではまだ「検討中」であり、ここで提示された価格や条件が確定ではありません。DD(詳細調査)を経てMOU・DAへと進む過程で、条件が変更されることは珍しくありません。LOIの提示価格に過度な期待をかけすぎない冷静さも重要です。
(出典:M&Aキャピタルパートナーズ、fundbook、バトンズ、M&Aナビ各社公式コラム、確認日:2026年4月12日)
意向表明書の法的拘束力 — 原則と例外を正しく理解する
意向表明書は原則として法的拘束力を持ちません。 これはM&A実務における確立された原則です。まだDD(デューデリジェンス)が完了していない段階の書面であり、M&A成立を確約することは困難なためです。
ただし、すべての条項に拘束力がないわけではありません。以下の条項については、例外的に法的拘束力を持たせるのが慣例です。
法的拘束力の有無(条項別)
条項 | 法的拘束力 | 理由 |
|---|---|---|
買収価格・スキーム | なし | DD前の暫定条件のため |
M&A後の経営方針 | なし | 今後の交渉で変わりうるため |
従業員処遇 | なし | 同上 |
独占交渉権(排他的交渉権) | あり | 他の買い手候補との交渉を制限する重要な権利 |
秘密保持義務 | あり | 情報漏洩防止のため |
費用負担 | あり | 破談時の費用処理を明確にするため |
管轄裁判所 | あり | 紛争時の手続きを確定するため |
弁護士が指摘する近年の注意点
弁護士の八木啓介氏は、近年のM&A実務において売り手に対する意向表明書への署名・押印の要求が増加していることを指摘しています。
本来、意向表明書は買い手が一方的に差し入れる書面であり、売り手が署名する必要はありません。しかし、買い手側が売り手にも署名を求め、結果として売り手にも法的義務が生じるケースが見られます。
売り手オーナーへの注意喚起:
- 意向表明書への署名・押印を安易に行わないこと
- 署名を求められた場合は、M&Aアドバイザーまたは弁護士に相談してから判断する
- 売り手に法的義務が生じる内容であれば、「基本合意書(MOU)の形にしてほしい」と求めるのが適切
(出典:弁護士 八木啓介コラム「意向表明書の法的拘束力と売主による署名・押印の要否」、M&Aキャピタルパートナーズ、M&A総合研究所各社公式、確認日:2026年4月12日)
注意: 法的拘束力の範囲は個別案件の内容・当事者の合意により異なります。実際の判断にあたっては、M&Aに精通した弁護士への相談をおすすめします。
第一次意向表明書と最終意向表明書の違い
入札方式(複数の買い手候補を競わせるM&A手続き)では、意向表明書が2段階に分けて提出されることがあります。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)」でも、この分類が明記されています。
2つの意向表明書の比較
比較項目 | 第一次意向表明書 | 最終意向表明書(第二次) |
|---|---|---|
提出タイミング | 一次入札時(DD前) | 二次入札時(DD後) |
情報ベース | 企業概要書(IM)のみ | DD結果を反映した詳細情報 |
価格の確度 | 暫定的・レンジ表記 | DD結果に基づく最終価格 |
法的拘束力 | 通常なし | 買い手を法的に拘束する場合あり |
目的 | 買い手候補の絞り込み | 最終候補の選定・条件確定 |
売り手にとっての実務上の意味: 第一次LOIで提示された価格は、DD後に大きく変わる可能性があります。一方、最終意向表明書の価格は買い手を拘束するケースがあるため、より信頼度が高い数字です。
中小M&Aガイドライン(第3版、2024年8月改訂)では、意向表明書を「企業概要書に記載された情報等を踏まえて暫定的な希望条件等を記載した第一次意向表明書」と「デュー・ディリジェンスの結果を踏まえて最終的な希望条件等を記載した第二次意向表明書(最終意向表明書)」に分類しています。
(出典:中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」、M&Aキャピタルパートナーズ公式、確認日:2026年4月12日)
意向表明書を提出・受領するメリット
意向表明書の提出は法的に必須ではありません。それでもM&Aプロセスで広く活用されているのは、買い手・売り手の双方にメリットがあるからです。
買い手側のメリット
- 買収への本気度を文書で伝えられる — 口頭のやり取りだけでは伝わりにくい真剣さが伝わる
- 複数候補がいる場合の選考で有利になりうる — 条件を明示することで、他候補との差別化ができる
- 初期段階で条件のすり合わせができる — DDに進む前に大きなミスマッチを回避できる
売り手側のメリット
- 買い手候補を比較検討する材料が手に入る — 複数のLOIを並べて、条件・方針・処遇を比較できる
- 買い手の意図や経営方針を早い段階で把握できる — M&A後に「こんなはずではなかった」というリスクを軽減
- 従業員の処遇について事前に確認できる — 売り手オーナーが最も気にする項目の一つ
売り手オーナーにとって、意向表明書は買い手を「選ぶ」ための判断材料です。価格だけでなく、M&A後の経営方針や従業員処遇まで含めて総合的に評価することが重要です。
【売り手オーナー向け】意向表明書を受け取ったときの確認チェックリスト

M&Aの記事の多くは「意向表明書の書き方」に重点を置いていますが、売り手オーナーにとって重要なのは「受け取った意向表明書をどう読み解くか」です。
以下に、意向表明書を受け取った際に確認すべきポイントをチェックリスト形式で整理します。
必ず確認すべき7つのポイント
1. 買収価格の算定根拠は具体的か
提示価格だけでなく、なぜその金額なのかの根拠が重要です。「年買法でのれん3年分」「EBITDA倍率○倍」など、具体的な算定方法が記載されているかを確認してください。根拠が曖昧な場合、DD後に大幅に値下げされるリスクがあります。
2. 価格修正要因(ダウンサイド条件)の範囲は妥当か
「DDの結果次第で価格を修正する」とだけ書かれている場合は要注意です。どのような事実が判明した場合に、どの程度の価格修正がありうるのかが明示されているかを確認しましょう。
3. 買収資金の調達方法は現実的か
自己資金なのか、銀行借入なのか、第三者割当増資なのか。資金調達の実現可能性が低いと、LOIの条件自体が絵に描いた餅になります。
4. 従業員の処遇と経営方針は明記されているか
「現行の雇用条件を維持する」「既存役員の留任を希望する」など、具体的な記載があるかを確認します。曖昧な場合は、MOU締結前に詳細を確認すべきです。
5. 独占交渉権の期間は適切か
独占交渉権が付与される場合、一般的な期間は1〜1.5ヶ月です。3ヶ月以上の長期間を求められた場合は、売り手にとって不利になる可能性があります。独占交渉権の期間中は他の買い手候補と交渉できなくなるためです。
6. スケジュールは現実的か
クロージングまでの想定スケジュールが記載されている場合、そのタイムラインが現実的かどうかを確認します。過度に急いでいる場合も、逆に長すぎる場合も注意が必要です。
7. 売り手への署名・押印を求めていないか
前述のとおり、意向表明書は本来、買い手が一方的に差し入れる書面です。売り手に署名・押印を求める記載がある場合は、その内容を弁護士に確認してから判断してください。
危険信号(レッドフラッグ)の例
次のようなLOIには注意が必要です。
- 根拠なく高い買収価格を提示している — 独占交渉権を確保した後に値下げする意図がある可能性
- 価格修正要因が極めて広範囲に設定されている — DD後の値下げ余地を最大限確保しようとしている
- M&A後の経営方針・従業員処遇の記載が一切ない — 売り手の懸念に対する配慮が欠けている
- 過度に長い独占交渉権の期間を要求している — 他の買い手候補との交渉機会を奪う意図がある
実際の判断にあたっては、M&Aアドバイザーや弁護士と相談のうえで対応してください。 本チェックリストはあくまで確認の目安です。
意向表明書でよくあるトラブルと対処法
意向表明書に関連するトラブルは、M&A実務において珍しくありません。売り手オーナーとして知っておくべき典型的なパターンと、その対処法を紹介します。
トラブル1:高値提示 → 独占交渉権獲得 → DD後の大幅値下げ
パターン: 買い手が意図的に高い買収価格をLOIに記載し、売り手に「この条件なら」と思わせて独占交渉権を獲得。その後、DDの結果を理由に大幅な価格引き下げを要求する。
対処法:
- LOI段階の提示価格の算定根拠を必ず確認する
- 根拠が薄い高値提示には慎重になる
- 独占交渉権の期間を短めに設定する(長くても2ヶ月以内が目安)
- 可能であれば、複数の買い手候補から同時にLOIを取得し比較する
トラブル2:売り手への不当な署名要求
パターン: 買い手が作成した意向表明書に、売り手の署名・押印欄が設けられている。署名すると、売り手にも法的義務(例:独占交渉義務、情報開示義務)が生じる。
対処法:
- 意向表明書に署名を求められた場合は、内容を弁護士に確認する
- 売り手に法的義務が生じる内容であれば、「基本合意書(MOU)の形にすべき」と主張する
- 仲介会社のアドバイザーにも見解を確認する
トラブル3:LOI提出後の長期間の放置
パターン: 買い手がLOIを提出した後、DD開始やMOU締結に向けた動きが長期間ない。売り手としては他の候補と交渉できず、時間だけが過ぎていく。
対処法:
- LOIの有効期限を明確に設定する(一般的には1〜2ヶ月)
- 独占交渉権の期限を短めに設定し、期限超過時は他候補との交渉を再開できるようにする
- 仲介会社のアドバイザーを通じて、買い手のスケジュールを定期的に確認する
(出典:弁護士 八木啓介コラム、M&Aキャピタルパートナーズ、fundbook、レバレジーズM&Aアドバイザリー各社公式情報、確認日:2026年4月12日)
意向表明書が省略されるケース
すべてのM&Aで意向表明書が提出されるわけではありません。以下のようなケースでは、LOIが省略されて直接MOUの締結に進むことがあります。
- 買い手候補が1社のみで、競合がない場合
- 売り手と買い手の間ですでに基本的な合意が形成されている場合
- 小規模M&Aで簡略化された手続きを採用する場合
省略されること自体に問題はありません。ただし、LOIがないまま進めると、買い手の条件や意図を文書で確認する機会が減る点には注意が必要です。仲介会社のアドバイザーを通じて、口頭でも条件のすり合わせを十分に行いましょう。
(出典:fundbook公式コラム、確認日:2026年4月12日)
M&A仲介会社はLOI作成・確認をどこまでサポートしてくれるか
M&A仲介会社を利用している場合、意向表明書の作成(買い手側)や内容確認(売り手側)のサポートを受けられるのが一般的です。
仲介会社に期待できるサポート
立場 | サポート内容 |
|---|---|
売り手 | 受け取ったLOIの内容説明・買い手候補の比較・条件交渉のアドバイス・弁護士への橋渡し |
買い手 | LOIの作成支援・記載内容のアドバイス・売り手への提出代行 |
M&A仲介会社は買い手と売り手の双方の代理としてプロセスを進めます(FA=ファイナンシャルアドバイザーの場合は片方の代理)。意向表明書に関する不明点や不安は、遠慮なく担当アドバイザーに相談してください。
ただし、法的な判断が必要な内容(署名要求への対応、法的拘束力の範囲の解釈など)については、仲介会社のアドバイスだけでなく、M&Aに精通した弁護士にも相談することをおすすめします。
関連記事: 仲介会社の選び方や各社の違いを知りたい方は「M&A仲介会社おすすめ比較(売り手向け)」をご覧ください。
こんな場面でLOIの知識が役立つ / こんなケースは専門家に相談を
LOIの知識が役立つ場面
場面 | 理由 |
|---|---|
M&Aアドバイザーから「意向表明書が届きました」と連絡があった | 内容を正しく理解し、適切な判断をするために |
複数の買い手候補がいて、誰と交渉するか決める必要がある | LOIを比較して、最も条件が良い相手を見極めるために |
初めてのM&Aで、プロセスの全体像を把握したい | LOIがどの段階で登場し、何が決まる書面かを知るために |
顧問弁護士にM&Aの相談をする際の予備知識として | 専門家との会話をスムーズに進めるために |
専門家に相談すべきケース
- 意向表明書に売り手への署名・押印を求める条項がある
- 提示された買収価格の算定根拠に疑問がある
- 独占交渉権の期間が3ヶ月以上など、長期間に設定されている
- LOIの内容が基本合意書(MOU)と同等の詳細さで、実質的な契約に近い
- DD前にもかかわらず、法的拘束力を持つ条項が多数含まれている
関連記事: M&A全体の流れを確認したい方は「会社売却とは?流れ・費用・注意点を完全ガイド」、株式譲渡の詳細は「株式譲渡とは?わかりやすく解説」もあわせてご覧ください。
まとめ
意向表明書(LOI)は、M&Aにおける買い手の「第一印象」ともいえる書面です。売り手オーナーにとっては、この書面の内容をどれだけ正確に読み解けるかが、その後の交渉の質を左右します。
押さえておくべきポイント:
- LOIは買い手が一方的に差し入れる書面であり、売り手の署名は原則不要
- 法的拘束力は原則なしだが、独占交渉権・秘密保持など一部の条項は例外
- LOIの提示価格は暫定的であり、DD後に変更されることがある
- 売り手は価格の算定根拠・従業員処遇・独占交渉権の期間を重点的に確認すべき
- 不明点や不安があれば、M&Aアドバイザーと弁護士の双方に相談する
M&Aは一生に一度あるかないかの大きな取引です。意向表明書を正しく理解し、納得のいく判断をするために、この記事がお役に立てれば幸いです。
関連記事のご案内
よくある質問(FAQ)
Q. 意向表明書は必ず提出されるものですか?
いいえ、意向表明書の提出は法的に必須ではありません。買い手候補が1社のみで基本的な合意が形成されている場合や、小規模M&Aでは省略されることがあります。ただし、複数候補がいる場合は提出を求められるのが一般的です。
Q. 意向表明書を受け取ったら、売り手は何か対応が必要ですか?
売り手が署名や回答書の提出をする必要は原則としてありません。LOIは買い手の一方的な意思表示です。ただし、内容を精査して買い手候補を比較・評価し、次のステップ(基本合意書の交渉)に進むかどうかを判断する必要があります。M&Aアドバイザーと相談しながら進めてください。
Q. LOIに書かれた買収価格は確定ですか?
確定ではありません。LOIの提示価格は、DD(デューデリジェンス)前の暫定的な希望価格です。DD後に価格が変更されることは珍しくなく、減額される場合も増額される場合もあります。最終価格はDA(最終契約書)で確定します。
Q. LOIとMOU(基本合意書)は両方必要ですか?
LOIは省略可能ですが、MOUはM&Aプロセスにおいてほぼ必須とされています。LOIが提出される場合は「LOI → MOU → DA」と段階的に条件が詰められていきます。LOIが省略される場合は「トップ面談 → MOU → DA」の流れが一般的です。
Q. 意向表明書を複数の買い手から同時に受け取ることはありますか?
はい、あります。特に入札方式のM&Aでは、複数の買い手候補から同時にLOIを受け取り、条件を比較して交渉相手を絞り込みます。この場合、価格だけでなく、M&A後の経営方針・従業員処遇・スケジュール・資金調達方法など複数の視点で比較検討することが重要です。
Q. 中小企業のM&Aでも意向表明書は使われますか?
はい、中小企業のM&Aでも意向表明書は広く活用されています。中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版、2024年8月改訂)」でも意向表明書の定義と分類が明記されており、中小M&Aにおいてもプロセスの標準的な書面として位置づけられています。
