結論から言うと、「どちらが良いか」は会社の規模・負債額・スピード重視度によって変わります。 費用を抑えたい中小企業にはM&A総合研究所、実績とネットワークの広さを重視する企業には日本M&Aセンターが向いています。
この記事でわかること:
- 両社の手数料体系の違いと、企業規模別の費用シミュレーション
- 組織体制(一気通貫制 vs 分業制)の違いが売り手に与える影響
- 成約実績・信頼性の比較
- 自社の状況に合うのはどちらかの判断基準
この記事は、M&Aによる会社売却を検討していて、M&A総合研究所と日本M&Aセンターのどちらに相談すべきか迷っている中小企業の経営者向けです。
M&A総合研究所と日本M&Aセンターの基本情報比較
まず、両社の基本情報を一覧で確認しましょう。設立時期・規模・上場市場など、会社としての成り立ちが大きく異なります。
項目 | M&A総合研究所 | 日本M&Aセンター |
|---|---|---|
設立 | 2018年 | 1991年 |
上場市場 | 東証プライム(2023年8月〜) | 東証プライム |
証券コード | 9552 | 2127 |
本社 | 東京都千代田区丸の内 | 東京都千代田区丸の内 |
代表者 | 佐上峻作 | 三宅卓 |
アドバイザー数 | 300名以上 | 600名超 |
国内拠点 | — | 10拠点 |
海外拠点 | — | 5カ国(シンガポール、インドネシア等) |
持株会社名 | クオンツ総研ホールディングス(2026年1月〜) | 日本M&Aセンターホールディングス |
(出典: 各社公式サイト・IR情報、2026年4月確認)
日本M&Aセンターは設立から35年の業界最大手、M&A総合研究所は2018年設立の後発ながら急成長を遂げた企業です。規模感としては、日本M&Aセンターがコンサルタント数・拠点数ともに約2倍の体制を持っています。
手数料体系の違い|最も重要な比較ポイント

両社の手数料で最も大きな違いは、「着手金の有無」と「成功報酬の計算ベース」の2点です。 この違いだけで、最終的な費用が数百万円〜数千万円変わることがあります。
手数料体系の比較表
項目 | M&A総合研究所 | 日本M&Aセンター |
|---|---|---|
着手金 | 無料 | あり(金額は案件規模により異なる) |
中間金 | 無料 | 公式サイトに明記なし |
月額報酬 | 無料 | — |
成功報酬の計算ベース | 譲渡価格ベース | 移動総資産ベース |
最低報酬額 | 2,500万円 | 公式サイトに明記なし |
レーマン方式の料率 | 5億円以下: 5%〜100億円超: 1% | 5億円以下: 5%〜100億円超: 1% |
(出典: 各社公式手数料ページ、2026年4月4日確認)
「譲渡価格ベース」と「移動総資産ベース」の違い
レーマン方式の料率表は同じですが、何に料率をかけるかが異なります。これが手数料の差を生む最大の要因です。
- 譲渡価格ベース(M&A総合研究所): 株式の売買価格のみが計算基準。売り手が受け取る金額がベースになる
- 移動総資産ベース(日本M&Aセンター): 株式価値+負債総額が計算基準。負債が大きい企業ほど手数料が膨らむ
企業規模別の手数料シミュレーション
以下は概算です。実際の手数料は案件の詳細や交渉内容により異なります。
【ケース1】株式価値3億円・負債2億円の企業
項目 | M&A総合研究所 | 日本M&Aセンター |
|---|---|---|
計算ベース | 3億円(譲渡価格) | 5億円(移動総資産) |
成功報酬計算 | 3億円 × 5% = 1,500万円 | 5億円 × 5% = 2,500万円 |
最低報酬適用 | 2,500万円(最低報酬が適用) | — |
着手金 | 0円 | 別途必要 |
概算合計 | 約2,500万円 | 約2,500万円+着手金 |
【ケース2】株式価値8億円・負債5億円の企業
項目 | M&A総合研究所 | 日本M&Aセンター |
|---|---|---|
計算ベース | 8億円(譲渡価格) | 13億円(移動総資産) |
成功報酬計算 | 5億円×5% + 3億円×4% = 3,700万円 | 5億円×5% + 5億円×4% + 3億円×3% = 5,400万円 |
着手金 | 0円 | 別途必要 |
概算合計 | 約3,700万円 | 約5,400万円+着手金 |
※上記は概算であり、実際の手数料は個別の案件内容・交渉条件によって異なります。正確な見積もりは両社に直接お問い合わせください。
ポイント: 負債が大きい企業ほど、移動総資産ベースの日本M&Aセンターと譲渡価格ベースのM&A総合研究所との手数料差が広がります。逆に、無借金経営の企業であれば、計算ベースの差は小さくなります。
M&Aの手数料体系について詳しく知りたい方は「M&A費用の相場と手数料の仕組み」もあわせてご覧ください。
組織体制の違い|一気通貫制 vs 分業制

M&A総合研究所は「一気通貫制」、日本M&Aセンターは「分業制」を採用しています。 どちらが優れているということではなく、売り手にとってのメリット・デメリットが異なります。
一気通貫制(M&A総合研究所)
1人のM&Aアドバイザーが売り手企業に対して、初回相談から成約まで一貫して担当します。マッチング業務のみ別の専門担当が関与するハイブリッド体制です。
売り手にとってのメリット:
- 担当者が変わらないため、情報の伝達ロスが少ない
- 自社の事情を深く理解した担当者が交渉に臨む
- 相談のたびに状況を説明し直す手間がない
売り手にとっての注意点:
- 担当アドバイザー個人の力量に左右されやすい
- 売り手と買い手の双方を1つの組織で担当するため、利益相反のリスクがある(これは仲介モデル全般に共通する課題)
分業制(日本M&Aセンター)
売り手担当チームと買い手担当チームが分かれています。それぞれの専門チームが対応し、業種別の専門チームも設置されています。
売り手にとってのメリット:
- 売り手の利益を優先する担当者が一貫して味方になる
- 業種別チームにより、業界特有の事情に詳しい担当がつきやすい
- 組織として買い手候補の情報が豊富に蓄積されている
売り手にとっての注意点:
- 担当チーム間の引き継ぎで情報が抜け落ちる可能性がある
- 複数人が関わるぶん、意思決定スピードが一気通貫制より遅い場合がある
成約実績と信頼性の比較
実績の規模では日本M&Aセンターが圧倒的です。 ただし、M&A総合研究所も設立8年で急成長しており、年間成約件数は増加傾向にあります。
項目 | M&A総合研究所 | 日本M&Aセンター |
|---|---|---|
年間成約件数 | 234件(2025年9月期) | 1,078件(2025年3月期) |
累計成約件数 | 非公表 | 10,000件超(業界No.1) |
売上高 | 166億円(2025年9月期) | 440億円(2025年3月期) |
営業利益 | 49.6億円(前期比41%減) | 167億円 |
ギネス記録 | — | 2020〜2024年、5年連続でM&A支援のギネス世界記録 |
提携ネットワーク | — | 地銀9割、信金8割、会計事務所1,072所と提携 |
(出典: 各社IR情報・決算発表資料。決算期が異なるため単純比較に注意)
M&A総合研究所の直近業績について
M&A総合研究所の2025年9月期は、営業利益が前期比41%減と苦戦しました。案件のブレイク(破談)件数の増加が主な要因とされています。ただし、2026年9月期は売上高221.8億円(前期比33.6%増)、営業利益59.9億円(同20.7%増)と回復を見込んでいます。
なお、2026年1月に持株会社名を「クオンツ総研ホールディングス」に変更しましたが、M&A仲介事業は引き続き「M&A総合研究所」ブランドで展開されています。
(出典: ログミーファイナンス、東洋経済オンライン)
日本M&Aセンターの直近業績について
日本M&Aセンターの2026年3月期第3四半期(4〜12月)は、成約件数810件(前年同期比9.8%増)、経常利益157.3億円(同46.8%増)で過去最高を記録しています。通期では売上高463億円、営業利益170億円を見込んでいます。
なお、2021年に売上の前倒し計上が発覚し決算修正が行われた経緯がありますが、現在は再発防止策を実施済みです。
(出典: 日本M&Aセンター IR、日経新聞)
サービス内容・得意分野の比較
項目 | M&A総合研究所 | 日本M&Aセンター |
|---|---|---|
主な対象企業 | 中堅・中小企業(年商数千万〜数十億円) | 中堅・中小企業〜上場企業まで幅広い |
得意業種 | 製造業、IT、建設、医療、不動産、飲食など | 医薬品卸、IT、不動産、建設、食品、物流、医療・介護など10業界 |
平均成約期間 | 約6.6ヶ月(公式発表) | 非公表 |
AI・テクノロジー活用 | AIマッチングシステムを活用 | — |
海外M&A対応 | — | 5カ国に海外拠点あり |
業種別専門チーム | — | あり(10業界別) |
提携ネットワーク | — | 地銀・信金・会計事務所と広範な提携 |
M&A総合研究所はテクノロジーを活用したスピード感が特徴で、平均成約期間6.6ヶ月と公表しています。一方、日本M&Aセンターは全国の金融機関・士業事務所との提携ネットワークにより、幅広い買い手候補にアクセスできる点が強みです。
M&A総合研究所が向いている企業
以下のような状況であれば、M&A総合研究所が適している可能性があります。
- 初期費用を抑えたい企業 — 着手金・中間金が無料のため、成約するまで費用が発生しない。「まず相談してみたいが、費用が心配」という段階で相談しやすい
- 負債が大きめの企業 — 譲渡価格ベースのため、負債が大きい企業ほど日本M&Aセンターより手数料が安くなる傾向がある
- スピード重視の企業 — 平均成約期間6.6ヶ月と公表しており、テクノロジー活用による効率化を重視
- 年商数千万〜数十億円規模の中小企業 — 中小企業に特化したサービス設計
- 担当者との一貫した関係を重視する企業 — 一気通貫制のため同じアドバイザーが最後まで対応
日本M&Aセンターが向いている企業
以下のような状況であれば、日本M&Aセンターが適している可能性があります。
- 実績・信頼性を最優先する企業 — 累計成約10,000件超、業界最大手としてのトラックレコードがある
- 幅広い買い手候補の中から最適な相手を見つけたい企業 — 全国の金融機関・士業事務所との提携ネットワークにより、候補先の選択肢が多い
- 業界特有の知見が必要な企業 — 10業界別の専門チーム体制があり、業界事情に詳しい担当がつく
- 海外企業への売却も視野に入れている企業 — 5カ国に海外拠点があり、クロスボーダーM&Aにも対応
- 年商が比較的大きい企業(数十億円規模以上) — 上場企業を含む幅広い規模に対応しており、大型案件の実績が豊富
どちらにも相談する際の注意点
M&A仲介会社を選ぶ際は、以下の点に注意してください。
利益相反について理解する
M&A仲介会社は売り手と買い手の双方から手数料を受け取るビジネスモデルです。これは両社に共通する構造上の特徴です。中小企業庁の「M&A仲介に関するガイドライン」でも、利益相反管理の重要性が指摘されています。
売り手としては、自社の利益を最大化してくれるかを判断基準にしましょう。具体的には、以下を確認することをおすすめします。
- 担当アドバイザーが売り手側の立場で交渉してくれるか
- 買い手候補が複数提示されるか(1社だけに絞られていないか)
- 売却価格の算定根拠を丁寧に説明してくれるか
複数社に相談してから決める
どちらか一方に決める前に、両社を含む複数のM&A仲介会社に相談することを強くおすすめします。 理由は以下の通りです。
- 同じ企業でも、仲介会社によって想定売却価格が異なることがある
- 担当アドバイザーとの相性は実際に会ってみないとわからない
- 手数料の見積もりを比較することで、適正価格を判断できる
初回相談はほとんどの仲介会社で無料です。相談したからといって契約義務は発生しません。
報道・公式情報をチェックする
- M&A総合研究所については、悪質な買い手企業との仲介に関する報道(2024〜2025年、東洋経済・ダイヤモンド)がありました。同社は審査体制の厳格化などの対策を講じたと表明しています
- 日本M&Aセンターについては、2021年の不適切な売上計上問題がありました。現在は再発防止策を実施済みです
いずれも過去の事案であり、現在は対策が講じられていますが、相談時に改善状況を確認しておくと安心です。
M&A仲介会社の選び方について詳しく知りたい方は「M&A仲介会社の選び方ガイド」もあわせてご覧ください。
判断フローチャート|あなたに合うのはどっち?

自社の状況に当てはめて、以下の判断基準を確認してみてください。
Step 1: 着手金への許容度
- 着手金を払いたくない → M&A総合研究所に相談
- 着手金を払ってでも実績重視 → Step 2へ
Step 2: 自社の負債額
- 負債が株式価値と同程度以上 → M&A総合研究所のほうが手数料が安くなりやすい
- 無借金に近い → 計算ベースの差が小さいため、他の要素で判断 → Step 3へ
Step 3: 重視するポイント
- スピード・コスト重視 → M&A総合研究所
- ネットワーク・実績・業界知見重視 → 日本M&Aセンター
- 海外売却を視野に入れている → 日本M&Aセンター
いずれの場合も、最終的には両社に相談して比較することが最善です。
よくある質問(FAQ)
Q. M&A総合研究所は「完全成功報酬制」ですが、本当に成約まで一切費用がかからないのですか?
公式サイトでは、売り手企業向けに「着手金・中間金・月額報酬すべて無料」と明記されています(2026年4月確認)。成約に至らなかった場合、費用は発生しません。ただし、最低報酬額として2,500万円が設定されている点は把握しておきましょう。
Q. 日本M&Aセンターの着手金はいくらですか?
公式サイトでは具体的な金額は明記されていません。案件の規模や内容によって異なります。一般的には100万〜300万円程度が業界の目安とされますが、正確な金額は直接お問い合わせください。
Q. 年商1億円程度の小さな会社でも相談できますか?
両社とも中小企業を対象にしていますが、M&A総合研究所は最低報酬額が2,500万円と公表されています。年商規模が小さい場合は、最低報酬額が売却金額に対して割高にならないか確認が必要です。なお、小規模案件に特化したバトンズのようなM&Aマッチングプラットフォームも選択肢になります。
Q. 仲介会社に依頼してから成約までどのくらいかかりますか?
M&A総合研究所は平均成約期間6.6ヶ月と公表しています。日本M&Aセンターは公式に成約期間を公表していませんが、業界全体では6ヶ月〜1年程度が一般的な目安です。案件の規模や業種、条件によって大きく異なります。
Q. どちらの会社も売り手と買い手の両方から手数料を取るのですか?
はい、両社ともM&A仲介モデルであり、売り手・買い手の双方から手数料を受け取ります。これは仲介モデルの特性であり、利益相反に関する理解が必要です。売り手の利益を専属で代理してほしい場合は、FA(フィナンシャルアドバイザー)型のサービスを検討する選択肢もあります。
M&A FA(財務アドバイザー)について詳しく知りたい方は「M&A FAとは?仲介との違い」をご覧ください。
まとめ
M&A総合研究所と日本M&Aセンターは、どちらもM&A仲介業界を代表する上場企業ですが、手数料体系・組織体制・実績の規模が大きく異なります。
判断基準 | M&A総合研究所 | 日本M&Aセンター |
|---|---|---|
費用を抑えたい | ◎(完全成功報酬制) | △(着手金あり・移動総資産ベース) |
実績・信頼性重視 | ○(急成長中) | ◎(累計10,000件超) |
スピード重視 | ◎(平均6.6ヶ月) | ○ |
ネットワーク重視 | ○ | ◎(金融機関・士業と広範に提携) |
海外M&A | △ | ◎(5カ国に拠点) |
業界特化の知見 | ○ | ◎(10業界別チーム) |
最も重要なのは、どちらか一方に決め打ちせず、両社を含む複数のM&A仲介会社に相談してから判断することです。 初回相談は無料の会社がほとんどですので、まずは自社の状況を伝えて、担当者の対応・提案内容・見積もりを比べてみてください。
実際の売却判断には、税務・法務の専門家(税理士・弁護士)への相談も不可欠です。仲介会社選びと並行して、信頼できる専門家チームを確保しておくことをおすすめします。
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